「んん、」
なんか眩しいな。もう朝なのね。 なんかきらきらして、綺麗..。 薄目を開けて、ぼんやりした頭でそんなことを考えながら、手を伸ばす。 さらさらの手触り。 思わず引き寄せて頬ずりする。 「おはよ、リナ。目覚めたのか?」 突然、声をかけられ、一気に意識が覚醒する。 「きゃああ。」 綺麗なのは、ガウリイの金髪...。 あたしってばあたしってば..。 はう、まだ慣れないわ。 しかもガウリイ、パジャマ上着着てないじゃない。 自分でも顔が赤くなってるのがわかる。 髪をなでられる感触。 目を上げると、やさしい青い眼が笑ってる。 「まだ馴れないのか。」 「顔は馴れてるのよ。ただ、急に見るとつい...」 「驚くような顔かなあ。」 顎をつまんで考えるふり.. 「それにあんたパジャマはどうしたの。ちゃんと着なさいよ。」 とん、と厚い胸板を小突く。 「パジャマ?」 「そう、ちゃんと着ててよね。」 なんでで笑うの?そんなに嬉しそうに。 「じゃ、脱げよ。リナ。」 「なな、何てこと言うのよ。」 「だってほら、これオレの。」 お返しとばかりに、つんとガウリイがあたしの胸をつつく。 「こらえっち。へっ。」 殴ってやろうとした手が止まる。 そう言えばこのパジャマやけに大きいような..。 胸元がすかすかで丸見えじゃないの! 「きゃう。」 慌てて両手で胸を抱く。 「お前、ゆうべ間違えたろ。」 だから笑わないでよ。 「わかってたなら教えてくれたっていいじゃない。」 「だって、あんまり気持ちよさそうに寝ちまったから.. たたき起こして脱がした方が良かったか?」 そんな時だけ真面目な顔しないでくれる? 上目遣いに睨むあたし。ガウリイがまた笑う。 むか。あたしはあんたの玩具じゃない。 「とにかく。明日からあたしが目覚ました時、視界に入らないでよね。」 「おい、リナ。何怒ってるんだよ。」 「とにかく起き抜けのあんたの顔はあたしの心臓に悪いの。よろしくね。」 ぷい、と背中を向けあたしはこの話を終わりにした。 「ん、」 無意識に腕を伸ばす。 ふかふかのお布団さんの手触り。ただそれだけ。 「えっ。」 慌てて目を開ける。 ベットの上はあたし一人。ついでに部屋にもあたし一人。 「あれっ?」 起き上がりあたりを見回す。ガウリイの気配が、ない。 「なんで。どこ行っちゃったのよ。あの馬鹿。」 あたしはベッドから降りる。着替えなきゃ、パジャマじゃ探しにも行けない。 服を着ようとしたところに、ドアが開く。 「おはよう、リナ。お、いい眺め。」 「あ、馬鹿、早くドア締めてよ。」 パジャマの前を掻き合せる。戸口からは直接見えないはずだけど..。 「何処行ってたのよ。起きたらいないからびっくりしたじゃないの。」 「自分で言っといてそんな事言うのか。お前。」 「え、何か言ったっけ?」 「『とにかく。明日からあたしが目覚ました時、視界に入らないでよね。』」 物まねまでせんでいい。頼むからその体格で女言葉は止めて。あたしは額を押さえた。 「わかった。あんたが次の日までそんな事覚えてると思わなかったあたしが悪かったわ。 それであんたは、出ていってたわけね。」 「ああ。ついでに朝市覗いてきた。ほらよ。」 持っていた袋から、ぽんと放ってくれる。果物? あたしは両手を差し伸べ..慌ててパジャマの前を掻き合わせた。 ぽとんと果物が床に落ちる。 「あ〜あ、もったいない。つぶれたじゃないか。」 にやにや笑いながら、ガウリイが袋からもう一つ出して自分で齧る。 この〜お。あたしはいそいでパジャマのボタンを留める。 もう一度手を差し出す。・・?。 「ちょうだいよ?ガウリイ。」 「また落とすともったいないだろ。取りに来いよ。」 「んもう。」 目の前まで歩いて行き手を差し出す。 ガウリイも手を出す。 「??」 「お代は?」 「あんた、あたしから金とる気?」 「いや金じゃなくても良いけど。朝の御挨拶とか。」 にこにこ。あたしもにこにこ。 「そうね、おはようガウリイ。」 言いながら袋ごと果物をひったくる。 「おい、何すんだよ。」 「ちゃんとしたでしょ。朝の御挨拶。だからこれはみんなあたしのよ。」 ベッドに腰かけ、早速頬張る。 「ほ〜ぉ。いい根性してるなあ。」 「みんな誉めてくれるわ。だいたいなによ。勝手に出て行って。 起きたらいないからびっくりしたんだからね。」 「見えるとこにいたら駄目、出てったら駄目。 じゃあどうしろっていうんだよ。」 ずいとガウリイが近付く。きつい目。 「おこった、の?」 「あんまりわがままばっかり、言ってると。」 「言ってると・・?どうすんのよ。」 「どうされたい?」 にっこり笑うガウリイが、あたしの視界に広がって行った。
おわり |